『唯』
唯
少年が「やあ」という声とともに、フリスビーを投げた。父親に向かって素朴を振りかざすその様子は見ていて清々しい。親子は空中に投げ出されたフリスビーをただ見つめた。
その光景を見る私の目と、当人たちの目は乖離していた。角ばったグラフのように思い出がプロットされていた。
その点の形成のされ方に何の変哲もない。どの親子にも当てはまりそうだ。
徐々に溜め込んだ思い出は飽和し、ある一点で刻まれた。その思い出がどう古びていくのか、形を変えるのか、いずれにしろ生きる当人の隣で聞き分けよく待ってくれているのだ。
子を主役に置いた家族はかけがえがなく、素晴らしかった。一つの核となり表情は統一されている。
外に声が響き渡る。願望と曲解が、交わる点にひたすら立っている。