随筆 『淵』
淵
円柱状の材料をぐるりと回し、刃を当て削っていく。中心は削ぎ落とされ歪な形となり得よう。積極と消極、凸と凹、出るのか引っ込めるのか、選択肢の中から選ぶ、選択肢を創るのも自ら。それを可能性と呼んだり。未来の想像、興奮と恐怖。いみじくも入り混じり、背中を押され井戸の中に落ちる。いくらもがけども暗く、天命のように思われる。脱出は例外でいつも隣にいる。警鐘は頭に鳴り響き理性以上に必要を制す。ぐるりくるりと嘆き迷いながら、解答を探す気も頭からなく佇む。幾度となく繰り返し。
友が嫌悪され悔しさを覚え肥やしとなる。ぐっと消化し根を太くする。それは信頼ゆえの甘え、いくらかの扁形となる。心を見ぬまま処世術で判断、それは致し方ないのかも。もう十分に手の中にあるとずっと教えてくれている。瞬間の刺し方、また刺され方は業の深さと結びつくのだろうか。夜が更ければ瞼も軽くなる。煌びやかな色彩なれど、それは歩数とは比例しない。同等の明暗。
それでも、手は差し伸べられる。対価を欲しがり身を滅ぼさない。陽はのぼり僥倖が迎えにくる。か細い糸のような一縷の望みを引っ張り切る。きっと、その時まで。