日記

ある日、おじいちゃんに「客観性に収斂せよ」と説かれ、言葉の存在意義を考え始める。言葉の持つ諧謔性・残忍性・恣意性に導かれる。 - 総合芸術家集団「auly mosquito」 代表 http://auly-mosquito.com ・HomePage http://so-sasatani.com

恵子のくらし1

恵子は暮らし、考えていた。夜明け前にいつも、紙タバコを作っていた。

乾燥した手の中で葉がパサパサと踊る。

 

喉に通るものを選別するほどに歳をとり、着実に大人になっていた。幼い頃に、祖母に捨てられたおもちゃ箱。遠い記憶ほど、近くて鮮明であった。出不精な性格はその出来事にひもづいている。


「あかんからね、あかんからね」

祖母の口ぐせは、恵子のひねくれた性格を形成するのに十分であった。
誰も知らない、しんとした世界の感傷に浸り、そして、味噌汁を吸いあげた。夜はいくらか寄り添ってくれるが、いつか明ける。


抗いようのないものと手を繋ぎ、寝た。心地よさに身をゆだねれば、口からまた出てくる。「恵ちゃん、あかんからね、あかんからね。」

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