『巡回』
巡回
「心を表象する言葉。意味を持つため、伝える手段として、唯一となる」
「この世でめずらしく、どの人の暮らしぶりにも、関係を持つ」
目の当たりにしたことのない真実はたくさんある。変わりゆく人間の営み。そのままの視線。受け継がれたもの。滅びたもの。その分岐点は運命のみが決定を下したのか。
自然信仰。導き。清らかなるもの。美しさの下の棘。尊敬や尊厳。人生。判断基準。便利なもの、利用されるもの。善と悪、価値。今いること。現在地点。健康。器官。構成。打ち切り。外れ。
意味は常にあれど、本当に何ひとつ、理解できずに、生を全うすることが免罪符となるのか。聞こえてくる声。いかんせん、脳の命令系統。仮想の世界。拡張。認識する理由、認識できる理由。
この世で唯一の自分。その証拠、無きものを立証。理論。
私は無意識に、薄い筆圧で心に浮かぶ文字を書き連ねていた。雑に書かれたそれらの文字はまさにミミズのようであった。象徴していることなど特に何もなさそうと考え、空っぽの私は、そっと消しゴムを手に取った。
思案する手がかりさえ見つけられず、時計の針が動くその時にも何も起こらず。
曖昧なことを残らず片付けたい、それは一風変わった性格であり、また誰しもが奥底に持ち合わせている。
規則的な安心感と戯れていたい気持ちから、恋人に電話をした。知っている声、惰性でつむぐ会話に身を委ねる。
「蠍座のあなたは6位」恋人との会話に飽きた頃、つけっぱなしのテレビから聞こえてくる、今日の運勢に耳を傾けてみた。同時に、先ほど綴った言葉が霞みだす。世界を股にかける気まぐれは怒ることも、悲しむこともない。それゆえに、巡回する。