ライブハウスでフランクフルトを売っていた女の子の話
あれは確か下北沢にあるLIVEハウスに行ったときの話だ。
その日はお笑い芸人やメロコアバンド、さらには浴衣姿の女の子がフランクフルトを売っているというお祭り的なイベントだった。
売り子の女の子に「フランクフルトを食べませんか?」と話しかけられた。
僕は「だいじょうぶです。要りません」と答えた。
忙しそうに動き回る浴衣姿の女の子はフランクフルトを売り歩くだけではなく、キュウリを切ったりもしていた。一生懸命にキュウリを切っていた。それをぼけっと眺めていた。
どうやら、着物の女の子は包丁で手を切ったみたいだ。
もちろんその子と僕は知り合いではない。他人だ。でも、どこか一生懸命さが溢れており、心配になった。そうは言いつつも僕はただお酒を飲んでフラフラしていた。大事には至っていないのか、心残りでありながら。
ライブハウスはあいからわずの盛り上がりを見せていた。演者も遊びに来た人も大合唱をしている。外の世界がどうなっているのかなど目もくれず、隙間もなく音楽で夜を埋め込んでいた。もちろん僕もその一人だ。
数日もすると、あの夜に心配していた着物姿の女の子のことは忘れていた。また、いつもの日常に戻った。とどまらない記憶に悔しさを覚えることもある。
知り合いと代々木公園でピクニックをすることになった。
昼の12時過ぎだっただろうか。友達の大貫くんと待ち合わせその場所に行った。大貫くんはしっかりとしていて、僕にとって兄貴的存在でもある。
知り合いに呼ばれたピクニックなので知らない人もいた。ずっとニコニコ、いや、ふにゃふにゃしていて、発言すべてが間の抜けた女の子がいた。しかし、その笑顔つきの間の抜けた発言は素敵だった。目がくしゃっとなるその瞬間が。
そう、その子は一生懸命にフランクフルトを売っていた、包丁で手を切った着物姿の女の子だった。あの時の一生懸命さとふにゃふにゃくねくねしている笑顔が素敵な目の前の子、正直に言うと重ならなかった。ただ、どちらも惹かれるものがあった。
お酒を飲んだりお菓子を食べたり健全なピクニックも終盤になった。夜が近づく代々木公園は少し幻想的でもあった。少し歩くと噴水があり、カップルが肩を並べ座っている。
誰かが気を利かして持ってきたシャボン玉が宙を舞っている。
いつか消えると知りながら、ふわふわと浮く。
明かりがポツリポツリと照らす夜のピクニック。
友人の大貫くんがおもむろにギターを弾き始める。ふにゃふにゃした女の子は恥ずかしそうにしながら、唄を歌ってくれた。その歌声は夕闇の風に包まれ僕の心を受け入れてくれた。いつの間にか、ふにゃふにゃした女の子は妖艶な姿となり、吐き出せない感情を一つひとつ潰しているようだった。
気づけば僕は号泣していた。
ふにゃふにゃした女の子、包丁で手を切った女の子、妖艶な姿の女の子、彼女はたった一人だった。涙が止まらない僕は感情を教えてもらった。いつか消えると知りながら。
それが彼女との出会いだった。
あと書き
彼女というのは、今となってはすっかりお友達のゆいたんです。年齢不詳のゆいたんです。いつもニコニコしていて、ふにゃふにゃしていて、優しくて実は強いそんな女の子です!
上の話は記憶をたどった実話です。僕はゆいたんの唄を聞いてこれでもかというぐらい泣きました(´Д` )唄も群を抜いてうまいのですが、清らかな心を持っている人にしかだせない声をしています。性根が清らかではない僕はかないません。涙
また、ゆいたんの唄をこのブログでご紹介するのだ(´Д` )
とんでもなく癒されまする。 乞うご期待であります( ^ ^ )/