日記

ある日、おじいちゃんに「客観性に収斂せよ」と説かれ、言葉の存在意義を考え始める。言葉の持つ諧謔性・残忍性・恣意性に導かれる。 - 総合芸術家集団「auly mosquito」 代表 http://auly-mosquito.com ・HomePage http://so-sasatani.com

(2020-06-10) 規定的なハンコ

2020/06/10

 

ひどく思い悩む青年に「判断されるためにここに並んでいるんだよ」と大人の女性は言う。「真っ赤に染まったインクのような顔をして、面倒くさいわよ」と続ける。青年には印はまだ与えられていない。彼は順番を待っているうちに我慢ならず、"感情を確定させるハンコ"を盗み出して、何者であるかを規定しようとする。


体中にハンコを押して印をつける。何度も繰り返すうちに、その印はすぐに薄くなり、依存した中毒者のように、また別のハンコを探し始める。順番をきちんと待つ女性は、月に一度薬をもらいに病院にいくように、印付けを日常に落とし込み生活をする。


「規定されない勇気はないの?防御にしては、意外と脆いわよ」と女性。

「ハンコの存在を知らなければよかった」と青年は話をそらす。

 
虚勢の類と何ら変わらないことを青年自身も知っている。"その目の逸らし方は、いつも同じで工夫がない"と彼自身も気がついているが、習慣を矯正することはたやすくない。しかし、青年も女性も同じ穴のムジナであり、人生に捕らえられた人間、君とあなたのような関係なのである。

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