それでも、雲隠れできず貴方だけはそこにいる。
やたらに新書に手を出す君は、何かを見過ごしている。近似値的なフィルタで濾過し、指と指を合わせさすることも忘れている。幾ばくか理知的であろうと、雌雄を決する時には何の役にも立たない。知らぬが仏とただひとつの作品にも向き合わず、狂気を平らにし等間隔に並べ社会に溶け込ませる。
常に居座るシコリのようなものが、文章を書かせる。それ以外の時の言葉はどこか上滑りし、帳尻を合わせる。何に対してかも定まらず非常に悔しく、どの目も気になる。そこに自らの価値における大成はないと知る。私は六合目に差し掛かり、周囲の景色を確かめる。望んだものはすでに掴み切り、これ以上の目的もない。
大衆はいつも無意識に身体を支配され途方に暮れる。
それでも、雲隠れできず貴方だけはそこにいる。