「雨粒」
雨粒
窓に雨粒がついている。それは空から垂れてきて、偶然にくっついた。
街を見下ろせる場所には透明な窓がある。そこから覗くと、画一的に配置された向こう側の窓の模様が変わる。雨粒を通して見ると、真四角の窓にひびが入っている。
向こう側とこちら側のものを互いに重ねてみる。対称になることなしに、幾つも通り過ぎる。誰かとの間柄みたく。
雨は無造作に方向を定めず降り続けた。傘に小さな穴が空いていた。雨粒が肌にひっついた。少し髪の毛も濡れていた。水溜まりを避けて歩き目的地へ向かった。
大半の雨粒は地上に降り注ぎ、迷惑がられたり、有難られたりする。
もうすぐ彼の家の前に着く。