『葡-pao-』 コッペパンを食べる。
嫁と鍋
2019 1/10 嫁と飲みにいく。全然、もつ鍋がこない。
冷えたハイボール、鍋までのお供をこいつにする。
もつ鍋が到着、薄味で気に入った。(終わりかけのもつ鍋)
葡-pao-
ビニル袋から朝に買っておいたコッペパンを取り出す。大きく口を開けガブリと噛みつく。芳醇な香りが瞬く間に広がる。黒縁メガネで下唇の出た通りすがりの男に一瞥される。しかし、酵母が特徴の少ない円形や楕円形であると思えば、忍べるもの。
早くもふた口目。私はパンにかぶりつく。訪れる幸福を逃したくはないものだ。
「視線が喜びを殺すなどとは、なんたる悲惨。私はパンを食べているのだよ」
一切れのパンに狂酔する。
「周囲との調和に幸福を感じるなど、わざとらしい。私は美味しいパンを食べるのだよ」自らに言い聞かし、さらに一口。
白い街灯は舗装された道路を照らしている。あちらこちらにそれら(街灯)は存在する。その場にハイヒールを履いた仕事帰りの女性が通りかかり、カツカツと靴音を鳴らす。残響はその音のみとなる。
静けさと深淵な趣を同様のものと錯覚した私は、すっかりパンをかじることをやめてしまった。